とある人の解雇にまつわるお話です。
人生1回目の解雇通知書は、新卒入社したブラック企業から渡されたもの。当時23歳で、在職期間は1年弱、解雇理由は勤務態度不良と営業成績不良だったからそうです。
毎月100時間近くのサービス残業を行い、手取り16万円弱で強いられる絶望的な状況だったそうです。その上「キモイ、クサイ、死ね」といったパワハラも当たり前で、さらには、ファイルで頭を叩かれる始末、社用車を運転中に頭と腕を殴られ、胸元や腰回りを足でけられるなどの身体的暴力もあったそうです。
また、トイレ掃除、草むしりといった仕事を押し付けられたり、密室で複数人から罵詈雑言を浴びせられたり……。
壮絶な体験を経た末、解雇を言い渡されたため「許せず」会社を訴え、法廷で戦うことにしたそうです。
約20ヶ月後、会社側から金銭解決の提案があり、何度か交渉を重ねた結果、解雇は撤回され700万円の解決金と引き換えに、円満退社する条件で和解に応じたそうです。
人生2回目の解雇通知書は、中途入社した従業員500人の運送業の会社から渡されたそうです。前の会社よりはマシだったようですが、またブラック企業だったそうです。社用携帯を支給され、平日休日問わず対応を強いられたそうです。仕事だから、社会人だから、と言い聞かせて対応していたそうですが「この時間は無給だ」と言われ「もう限界です」と対応拒否の意思を示したそうです。すると、社内評価が急落し、すぐに解雇を言い渡されたそうです。
そこでまた、会社を訴え、今度は約24ヶ月間法廷で争い、何度か交渉を重ねた後、解雇は回避され、4,000万円の解決金と引き換えに円満退社をする条件で和解に応じたそうです。結局、2回の裁判で合計約4,700万円を手に入れたそうです。本人曰く
「人生で、あと5回くらい解雇されても良いと思えるようになった」
そうです。
さて、今回のケースは『バックペイ』(民法第536条2項)と呼ばれるこの支払いは、労使ともに覚えておいて損はないようです。
バックペイの考え方はシンプルで、そもそも解雇されたはずの労働者が「解雇は無効だ」と主張するということは「私は解雇されていない。今も従業員のままだ」と主張するのと同じ意味を持つそうです。
労働者としての地位を有してい事の確認を求める手続きで、これが解雇無効を求める裁判の本質であり、司法界では「地位確認請求」と呼ばれているそうです。
つまり、地位確認が求められた場合、解雇されたはずの労働者は解雇されておらず会社に在職していた。ということに経歴が上書き修正され、裁判中の間の分も給料を貰う権利が発生するそうです。
このことから裁判を起こし、判決後、円満退社として合計約4,700万円を手に入れることになったのでしょう。まぁ、正直なところ、会社は長期にわたる裁判を考慮し、円満退社という扱いにするために高額の現金で手を打つ選択しかなかったのでしょう。
日本では、海外のように簡単に解雇できない事にも問題があります。
近い将来「ブラック会社」という言葉が死語になり「ブラック労働者」という新たな社会問題が発生する可能性も考えられます。考えただけでも恐ろしい未来がやってきそうです。
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